国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議
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北口:
 ありがとうございます。具体的にお話いただいた訳ですが、私も国内の人権の専門家を養成するという点でその通りだと思います。それでは実際に、大学を作ってこられた辻野先生からご発言をお願いしたいと思います。

辻野:
 私はこういうところに招かれるのはいつも気が進まないのです。というのも、大学をつくるためには、乗り越えなければならない非常に大きな障害もあるといった、厳しいことを私は言わなければならないからです。
 しかし、それでも本日のこの会に参らせていただいた理由は2つあります。一つめは、私は常々、人生3回大学に行く時代が来ていると思っており、1度目は18、19歳の時、2度目は10年から20年経過した少し仕事で油が乗り切りかけた時です。2度目の大学は夜間制の大学院だと常々思っておりました。最後は、引退の少し前くらいからで、第2の人生を考えるために、もう一度別の分野の勉強をするために大学に行く。そういうことで、人生3回大学へ行く時代が来ているのではと思っている訳です。その組み合わせは様々ですが、夜間制の大学院や通信制の大学ないしは大学院などが考えられます。私自身こういったものに大変関心があり、今回、夜間制の大学院を考えておられるということ、もう一つは私の長年の友人であります池坊短期大学の秋定先生の強い要請があり、これは断る訳にいかないということで本日参った次第です。

 さて大学院大学ですが、これは大学があり、その上に大学院を作るのが原則となっております。例えば、法学部の上に法学研究科があるといったようなことです。ところが、その大学を飛ばして今回、大学院を作ろうと言うのですからこれは大変なことです。さらに、大学を作ることは会社の設立とは比較にならないほど難しいものです。会社は一定の要件で資本金を集めればできる訳ですが、大学は文部科学省が認可しなければできません。さらに、学校法人というものを作らなければなりません。
 では、学校法人を作るためには何が必要かと言いますと、熱情と能力です。まずお金がいるのですが、100億から500億くらいのお金をつくならければなりません。熱情があって、お金を作る能力がないといけない訳です。これは経済情勢が非常に絡みまして、バブルの絶頂期ですと、大阪府、大阪市がそれぞれ100億を出し、そして民間企業から100億の寄付を集めて公設民営ということで私立の学校法人を作り、大学院を作るというのは簡単なことと思われます。しかし、現在はそうではなく、地方自治体は毎年赤字を計上する県立大学や私立大学は官有物の払い下げみたいに、民間に払い下げをしたいといった状況です。いまのようなご時世では、学校法人を作ること自身も難しいことだと思います。
 その上、学部を飛ばして大学院を作ることは、文部科学省の規則によりますと、大学院は大学院の研究科の基礎となる学部等が充実しておりその上に設置する、となっていますが、大学がなくて大学院だけを作る場合、学部を置くことなく大学院を置く教育研究上の特別の必要性があること、という規定があります。さらに、研究所等や他大学との密接な連携協力により学部に代わる十分な基盤があること、となっております。

 大学院大学というのは、日本には恐らく2つしかないと思います。一つは財界総出資のような国際大学で、もう一つは国際仏教学大学院大学です。ここは仏教学の研究であり、入学定員は4名で、5年間の総定員20名です。従って、学校法人イコール大学を作るためには一切借金はできません。全部寄付で集めないといけない訳です。学校法人の憲法、会社でいうと定款のことを寄付行為と言いますが、なぜ寄付行為かといいますと寄付で成り立つからです。そういったことから、100億や200億の寄付を設立のための自己資金としてまず集めないといけない訳です。
 また、毎年入学者の授業料で賄えず、毎年コンスタントに赤字が出ますとそれを経常的に補填する財源を確保しなければなりません。そうしますと、生半可なことではできません。繰り返しになりますが、公設民営については今は無理でしょう。次にどういう方式があるかと言いますと、例えば、北口先生がおられる近畿大学を説得しまして、そこにこういう学科を設置していただくことなどが考えられます。どうしても大学院大学を作りたいのであれば、そういう方法もあるのではないかと思います。どうしてもこれを作ろうという、熱意と能力は非常に重要です。できたらいいなぐらいの気持ちであれば、やめておいた方がいいと思います。以上、最初の発言で厳しいことを申しあげます。

北口:
 ありがとうございました。私は以前にも、辻野先生が実際に大学を作ってこられて大変苦労されたということを聞いております。
 もともと国際人権大学院大学(夜間)は、国際人権大学を作ろうというところから始まりましたが、その場合、例えばその学部生はどこに就職するのかなどといったことから、ある意味、大学院大学のほうが作りやすいのではないかということになった経過があり、そこから裾野を広げていくといったことになったものです。
 先ほど辻野先生が言われた財源の問題は、非常に大事だと思います。現在、公設民営の大学はいくつかありますが、財政的には非常に苦しいと思われますし、いま辻野先生が言われたようにどのような財源を当てるのかといった問題もあると思います。
 その点について、私自身は非常に単純に考えております。例えば、湾岸戦争の時に日本は1兆数千億というお金をだした訳ですが、あまり国際的には評価されませんでした。では、どのような国際貢献を行うべきなのかですが、人間の体でもそうですが、病気になってから治療して治療費を負担するよりも病気になる前に健康を維持するためにお金を使うほうがいいと思います。そこで、そういう紛争などを防止するという意味で、例えば国が国際貢献の一環として国際人権大学院大学など、そういったところに財源を支出するというのは、他の国でこれに似た事例があるのかどうか。あるいはこれから先考えられるのかどうかということを、横田先生にお聞きしたいと思います。

横田:
 多分そういう意味での政策を行っている事例はないと思います。
 残念ながら、日本の政府もそうした政策をとるような体質ではないと思います。
 しかし、これから先は企業や自治体、新聞社なども、人権の専門家が中にいないと困る時代になってきていると思います。極端な例ですが、日本の企業が海外に行き、特にアメリカなどで、少数民族の人たちに対して差別的な雇用政策をとっているということで訴えられ、何十億円という和解金を払わされているというケースや、女性差別、セクハラなどで訴えられて数千万円のお金を払わされているなどということがあります。
 それを見ますと、人権の専門家が中にいて常にある程度注意を払っているという体制が必要だということはどこの企業でもいま感じている筈です。実際、内部に人権教育啓発部などといったものを作っている企業も増えてきています。しかしそこにはいまのところ順番に中の人を配属しており、専門家ではありません。やはりそこには専門家が必要だということで、そういう人たちを教育するためのプログラムを作る研究を進めるといった形で科研費などを出し、国の研究・教育助成金などを得ることで、人権に集中した何かのプログラムをつくるといったことはあり得ると思いますが、国が率先してこういう大学を作ろうということは、恐らくあり得ないと思います。

 私も、既存大学でしたので新たに法人を作る必要はありませんでしたが、大学でこれまで5つあった学科にもう一つ学科を加えるということで、国際関係学科を作ったことがあります。そこで学部を作ってその上に大学院を考えるとすれば、現在ある学部で、法学部や法政学部、法経学部などの中に、例えば国際人権専攻というものを専攻のレベルで作り、それを実績としてその次に大学院として国際人権協力専攻というようなものを新たに作ってはどうか。しかしこれも文部科学省の認可事項ですが、これは比較的現在の人材の一部を使って、また施設等もいまのものにプラスアルファということで、ある程度可能性が広がるのではないかと感じております。

辻野:
 私もそういうところにしか活路は見出せないように思います。従って、例えば先ほど近畿大学と申し上げましたが、川島先生の帝塚山大学においても有力な候補だと考えられる訳です。
 もう一つのアイデアとして、夜間における通信制の大学院では、仏教大学における通信制の大学院の先例もあり、学部とは別の所に大学院を開けることになっておりますので、人権大学院大学では例えば、梅田界隈にもアフターファイブに行くことができるようなビルがたくさんある訳です。しかし、通信制におけるスクーリングを考えると、これは多人数が予想されます。私の前任校で芸術の通信制を行ったのですが、最初500人の定員に対し、初年度に約1,000人集まり、去年は2,000人もスクーリングに来ている状況です。
 これは、経営的にも十分可能であることが、どこかの大学にこういう人権の専攻を開いていただくよう説得するときに言えると思います。だから、近畿大学や帝塚山大学などにいいアイデアを売り込んであげたらいいと思います。全部自前で何かをやろうとすると、もう行き止まりですが、このように何か方法があるのではないかと考えられます。

北口:
 ありがとうございます。一つの方向として通信制ということも含めて話が出てきた訳ですが、現に日本に居ながらにしてイギリスの大学の講座をインターネットを通じて受講できるようなこともできています。恐らくここ5〜6年で通信・ITのあり方がもっと変わっていくものと思われます。
 その中で、可能性というのは広がっていくと思うのですが、今の話を聞いておりまして、もう一つ、質問ですが、かつてアジア・太平洋人権情報センターを作るときに、私やこの府民会議の事務局長をされている社団法人部落解放・人権研究所の友永さんなど数名で、ヨーロッパの視察に出かけた際に、フランスのストラスブール国際人権研究所に参りました。そこでいろいろな夏期講座のようなものを開かれており、世界の外交官の卵や検察官、裁判官などが来られていました。これは日本で言う学校法人ではないのですが、非常に高いレベルの内容をやっておられ、そういう意味ではすぐに学校法人を立てなくても、例えば大学院大学レベルの教育を行ない、そうした実績を積む中で、独立するか、どこかの大学と連携するなどしてそういうものを作っていくことも可能ではないかと思うのですが、その辺について、横田先生のご意見をお聞きしたいと思います。

横田:
 その通りだと思います。それは海外でも行われていますし、やれば必ず関心を持って参加する人が出てきます。とりわけいい教育をして出て行った人がいい仕事をするなど、教育のレベルで大事なのは、そういう実績が口コミや人間関係の中で評価が固まって行くことです。口コミが、長期的には非常に効果があると思います。
 いま、北口先生がお話されたことで、例えば6週間なり12週間という研修プログラムをやっているところは、比較的人権の分野でもこの頃増えてきており、ミシガン大学やコロンビア大学でもやっています。ひとつ問題は、学位が出ないということで、せっかくそこで勉強したことが、ただ修了しましたという証明だけになることです。マスターの学位が取れないと、例えば就職の際、やはりマスターを持ってないという話になり、あるいは、就職した後で、昇進の段階でもマスターを持っている人のほうが優先されるといったことがあるものですから、せっかく勉強して実力がついていても学位があるかないかの違いでその人が正当に評価されないということが国際社会で非常に多い訳です。それを考えますと、長期的には学位を出すプログラムにしたほうがいいと思いますが、その前の段階で一定の期間、北口先生の言われるようなことを試行し、どのくらいの人が参加するか、どういう教え方をすれば効果的かなどということを行ない、実績を積んでからということは十分に考えられると思います。

北口:
 ありがとうございました。いまの点に関して、畑さんから、特にマスコミの立場から意見をいただきたいと思います。

畑:
 人権を学ぶということは、私などは、女性学やフェミニズムに関心を持っていたのですが、民間で働く人や、草の根運動をされている人など、そういう人たちによって研究分野が進んできており、研究書や専門書などにまとめられ、女性学という一つの本やカリキュラムなどになっていった部分があると思います。そういう部分を生かせるような組織というのはどのようなものであればいいのかと、いま考えながら聞いておりました。

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