国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議
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2009年度海外調査報告

テーマ  コロンビア大学・マサチューセッツ州立大学における大学院レベルの人権プログラムについて
講 師  山下 梓さん(人権市民会議)


1.はじめに
2.コロンビア大学のプログラムについて
3.マサチューセッツ州立大学のプログラムについて
4.結びに代えて

【3.マサチューセッツ州立大学のプログラムについて】

【プログラムの概要】  
 ボストンから車で約2時間、人口約35,000人の街アマーストにあるマサチューセッツ州立大学アマースト校の教育学大学院では、教育学修士と博士課程で、社会正義教育学プログラム(Program of Study in Social Justice Education、SJE)として人権プログラムが展開されている。プログラム修了後に得られる学位は教育学修士・博士である。
  修士課程にはSJEプログラムの他に、第2言語としての英語と多文化教育、幼稚園教員教育、高等教育、国際教育、スクール・カウンセラー教育、中等学校教員教育等11のプログラムがある。博士課程にはSJEプログラムの他に、教育政策・リーダーシップ、言語・文学・文化、研究と評価方法、学校心理学、教員教育と学校改善の7のプログラムがある。
山下梓さん SJEは、抑圧(oppression)に焦点を当てた教育や教育プログラムを指導的立場で実践できる人材の育成を目的としており、SJEの理論や実践に対するアプローチは、公民権運動に基礎を置く。差別的な制度的構造や文化的慣習の分析・評価・変革において、社会正義(social justice)・抑圧・解放(liberation)は中心的概念。SJEプログラムにおける「抑圧」には、社会的関係における支配や従属関係の問題、参画へのアクセス、人種・ジェンダー・階層・能力・宗教・セクシュアリティの問題等を含む。
  法科大学院を中心とする伝統的な人権プログラムが具体的または特定の人権侵害事案に焦点を当てながら学ぶのに対し、SJEにおいては、社会構造や関係性により重きを置いて、教育を通じて社会における平等や社会正義の実現を目指す。
  プログラム修了に要する期間は、修士課程で2年、博士課程で4年。
  年間の学費は、マサチューセッツ州居住者で$10,506(約102万円相当)、非居住者で$20,408(約203万円相当)となっている。

【アドミッション・ポリシー】
 修士課程への応募者は、社会正義教育における1年以上の経験を有していることが望まれる。博士課程への応募者は、社会正義教育に関連した修士号保持者で、カウンセラー・教員・教員研修・学生サービス・アドボカシー等の経験を有していることが必要。

【授業内容】
 修士課程は、必修・選択コース、実習からなる。博士課程はより研究に重点を置く内容となっており、必修・選択コースの他、博士論文執筆のためのリサーチメソッドに関するコースからなる。
以下は、コースの一例。

必修コース
教育における社会正義、社会正義教育の現代的・歴史的構築、社会正義教育の歴史的・教育学的基礎、社会正義教育の評価、社会正義におけるカリキュラム策定とファシリテーション、多文化グループ・プロセス/社会正義教育における自覚
選択コース
女性と抑圧、教育におけるレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー問題、学校・家庭・コミュニティ:協力的パートナーシップを築く、家族・学校への介入と協議、多文化グループ・プロセス、抑圧と教育、多文化生涯教育、教育における社会正義、社会正義教育デザインとファシリテーション、学校における多文化カウンセリング、アイデンティティ形成における問題、グループ間対話、教育指導計画と評価、教育におけるオルタナティヴ・リサーチ・パラダイム

【学生】
 SJEプログラムの学生には、社会学・歴史学・女性学・組織行動学・政治学等を学問的背景に持ち、学校、市民団体、企業などで働いた経験を持つ人が多い。インタビューに応じていただいた博士課程の学生2人も、大学で学生活動の支援担当部署に所属したり、公立高校の社会科教員をし、LGBTフレンドリーな環境づくりに携わった経験を持っていた。
 学生数は、修士課程は1学年につき約10人、博士課程は約4人(調査時点)。留学生の割合は非常に低く、修士・博士両プログラムで2〜3人。
卒業後は、多様性や社会正義の問題に特化した非営利団体、教育機関、コンサルタントなど、コミュニティにより近い「草の根」で活動する団体や組織に就職する人が多い。

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