2009年度海外調査報告
テーマ コロンビア大学・マサチューセッツ州立大学における大学院レベルの人権プログラムについて
講 師 山下 梓さん(人権市民会議)
【4.結びに代えて】
各プログラムを比較すると、コロンビア大学とマサチューセッツ州立大学では、法学・国際関係学、教育学から人権を捉えており、視点が異なる。コロンビア大学の視点は、世界各国の人権プログラムでもよく見られる。一方、マサチューセッツ州立大学のように教育学の分野からのアプローチはアメリカ国内だけでなく、世界的に見ても珍しい。また、前者が国際的に活躍できる人材の養成を目指し、実際に国際機関や国際的なNGOで活躍する卒業生を輩出しているのに対し、後者は、プログラムに参加する学生が大学周辺のコミュニティや学校で社会正義を教えたり、卒業生の多くがアメリカ国内の学校やNGOに就職するなど、比較的ローカル志向である。
有名私立校と地方の州立大学では財政状況が大きく異なり、訪問時、マサチューセッツ州立大学は、昨今の経済危機による州の財政状況の悪化で大学に対する予算を大幅にカットされ、プログラムに関与する職員数を事実上減らさざるを得ないという困難に直面していた。
言うまでもないが、人権を学んだり、その実現のために活動する上で、グローバルな視点・アプローチもローカルなそれもどちらも同様に重要である。どちらに重きを置くかとい問いはあり得るが、両者を切り離して考えることはできない。コロンビア大学とマサチューセッツ州立大学のどちらのようなプログラムを目指すかは、どのような視点に立って、どのような人材の育成を目指すのかというビジョンによるだろう。また、どちらのタイプのプログラムに留学しようかと考える人がいれば、プログラム修了後にどのように活動を展開していきたいかという将来像によるだろう。
いずれにしても、府民会議を含む日本での人権プログラムの設置を目指す方々や、人権を学ぶために留学したいと考えている方等、ひとりでも多くの方にとって本報告が有益な情報となれば幸甚である。
最後に、この場をお借りして、貴重な調査へ派遣してくださった府民会議と、多忙にも関わらず調査へ協力してくださったコロンビア・マサチューセッツ州立両大学のすべての関係者に心よりお礼を申し上げたい。
この原稿は、海外調査報告をもとに執筆された「月刊ヒューマンライツ」
2009年9月,10月号の原稿を、報告者のご了解を得て転載したものです。
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