2009年度海外調査報告
テーマ 大学院における人権プログラム・ヒアリング調査(イギリス)について
講 師 李 嘉永さん(部落解放・人権研究所)
【はじめに】
2009年1月30日から2月7日にかけて、イギリスの大学院における人権修士コースについての調査を行った。この調査に先立って、2007年度、国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議から委託をうけて、阿久澤麻理子さんを中心とした研究グループがインターネット調査を行ったところである(1)。今回の調査は、その結果を踏まえて、特徴的なコースを選択し、実際に訪問して、コース担当教員等にインタビューを行い、カリキュラムの内容や運営の実情、学生の進路などを伺い、日本での人権大学院大学の実現に向けた運動に資することを目的としている。
筆者が担当したのは、イギリスの大学院であるが、イギリスでは、特に法曹養成を目的とした大学院において、国際人権法を中心にしたコースが多数開講されている。しかし、これらのコースには、人権活動家の養成という要素は希薄である。そこで、人権活動の現場で必要とされる知識やスキルを教授することを主眼に置いたものに焦点を当てて、ヒアリング対象コースを選定した。
具体的には、ロンドン大学コモンウェルス研究所「人権の理解・保障MAコース」、オックスフォード大学生涯学習学部「国際人権法MStコース」、そしてイースト・ロンドン大学「ソーシャル・ワークMAコース」及び「国際ソーシャル・ワークMAコース」である。調査については、阿久澤先生を中心とした研究会で、あらかじめ質問項目を作成し、事前に担当教員または事務職員に送付し、ヒアリング当日、個々の項目について回答していただくという形式をとった。また、担当教員や職員のみならず、可能な限り受講生の意見についても伺うことを予定していたが、訪英した期間は、リーディング・ウィークに当たっており、学生インタビューは実施できなかった。そこで、ここでは、担当教員・職員を対象としたヒアリング結果の概要を紹介することとする。
(1)かかる調査の結果については、国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議『世界の大学院における人権教育・研究の動向「人権」学位を授与する大学院プログラム・ダイレクトリー』(2008年6月)として取りまとめられている。
http://www.shse.u-hyogo.ac.jp/akuzawa/Directory.pdf(2009年8月24日掲載確認)
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