2009年度海外調査報告
テーマ 大学院における人権プログラム・ヒアリング調査(イギリス)について
講 師 李 嘉永さん(部落解放・人権研究所)
【3.イースト・ロンドン大学「ソーシャル・ワークMAコース」及び「国際ソーシャル・ワークMAコース」】
ロンドンのイーストエンド地区、ドックランドキャンパスにあるイースト・ロンドン大学の「人文・社会科学部」には、社会福祉援助の担い手であるソーシャル・ワーカーを養成するコースとして、「ソーシャル・ワークMAコース」が開設されているが、冷戦終結後の人道的危機に対応するために、2002年、国際人道援助の専門家としての「国際ソーシャル・ワーカー」の養成コースを開設している(4)。両者の概要に関して、同学部ソーシャル・ワークコース責任者のロバート・ジョーンズ教授から、ヒアリングを行った。
コースの定員は33人であり、そのうち国際ソーシャル・ワークコースは16人である。応募資格については、学部卒業程度の学力と、ソーシャル・ワークに関する一定の経験があることが望ましいとしている。学生には、あまり多様性があるとはいえないけれども、国際ソーシャル・ワークコースには、留学生が多く、自国の社会福祉の実情について英国出身学生にインプットする場合がある。これは、学生にとって刺激になっているようだ。
カリキュラムに関しては、イギリス保健省が指定する枠組みに沿って科目が設定されているが、これに加えて、国際ソーシャル・ワークコースでは、ジェンダー論や難民研究コース、さらには法学部の国際人権法の教員と連携し、選択科目として、女性や難民の福祉的援助を進めるための科目が開講されている。また、ソーシャル・ワークに関する実習(200日)が課されており、タビストック・ポートマンNHS(国営医療制度)が運営する病院において、ソーシャル・ワーク実務を学んでいる。
学費は英国・EU出身学生が4,800ポンド、留学生が10,440ポンドとなっているが、学生は、コース終了後、政府認定の資格試験に合格すれば、ソーシャル・ワーカーとして登録され、社会福祉援助に従事する。なお、国際ソーシャル・ワークコース卒業生の中には、人道援助系のNGOに就職する者も少なくないという。
(4)各コースの概要については、イースト・ロンドン大学人文・社会科学部の大学院プログラムのサイトを参照。
http://www.uel.ac.uk/hss/programmes/postgraduate/(2009年8月24日掲載確認)
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