国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議
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1.最近の我が国の人権の状況
  ・社会福祉基礎構造改革の狙い
2.我が国社会の深刻化する問題
  ・欧州における状況と「ソーシャル・インクルージョン」の理念
  ・CANの活動
  ・ポスト地対財特法への活用
3.環境政策の変化
  ・環境・社会・経済の融合
4.国際人権大学院大学(夜間)への期待

(欧州における状況と「ソーシャル・インクルージョン」の理念)

 そこで世界、他の国はどうなっているのか。特にこのような社会からの排除・孤立という問題が、政治の場で指摘されたのは、まずフランスだろうと思います。フランスではもともと戦後の復興を図るために旧植民地から、外国人をたくさん迎え、特に都市を中心に単純労働者として用いる訳です。これがフランスの戦後の復興に大きく寄与しました。しかし彼らもだんだん高齢化してきますし、不況で失業してきます。そうしますと、むしろ社会から排除される傾向が1980年代後半から出てまいります。
 また、若者達を中心としたホームレスからは、覚醒剤等の麻薬中毒・薬剤の中毒ということも併せて持っている場合も多いなどの問題が出てまいります。また、当時は外国人の排斥という事で右翼の動きが非常に強かったのです。そこへ社会党のジョスパンが1997年に首相として登場いたします。
 ジョスパンがとった政策は、例えば外国人またはホームレスというような社会から排除されやすい人達を社会の仲間に入れるといった、いわゆる「ソーシャル・インクルージョン」という政策を提言して展開する訳です。1998年に社会的な排除を防止する法律をつくります。そしてソーシャル・インクルージョン、社会の仲間に入れていくということが、フランスの社会政策の基本となってくる訳です。これは元々フランスというのは非常に地域のつながり、家族のつながりを大切にするという風土から生じているところもあると思います。

 一方、イギリスにおいてもフランスと同様、ホームレスが24万人・外国人が約5%という状態で、彼らに対する排除運動が強く起こります。ただちょっとここで注意していただきたいのは、イギリスの24万人というホームレスの人数は、日本の3万人に比べたら非常に多いと取られる人もおられると思いますが、日本以外の先進国のホームレスの定義というのは、路上に寝ている人、路上生活者の人だけをホームレスというのではなくて、例えば慈善団体のシェルターに入っている人や親戚の所にたまたま寄宿していたとか、安定してない居住生活している人をすべてホームレスと言いますので、このような高い数字になります。
 そこで1997年にブレア政権が登場します。ブレアもフランスのジョスパンの影響を非常に強く受け、資本主義でもない社会主義でもないという、いわゆる第3の道というものを政策に掲げる訳です。ブレア政権の基本的な社会政策は、このフランスの影響を受けましてソーシャル・インクルージョンという、単に福祉や生活保護を提供するだけではなく、社会の仲間に入れて、例えば教育をする、職業を提供するといった形の政策を提言し、現在かなりの成果をあげています。

 これがイギリスとフランスの状況ですが、ヨーロッパ全体においてこのような政策が中心となりまして、現在イギリスもフランスもヨーロッパ連合「EU」という形で共同の社会政策を作っている訳ですが、そのEUの憲法というのはローマ条約といいますが、ローマ条約を最近改正しまして、EUの社会政策はソーシャル・インクルージョンを基本にするという形で改正がされました。EU全体がこのように社会から排除することなく、また社会から孤立させることなく社会の仲間とする社会政策を展開していこうといった形になった訳であります。
 具体的にソーシャル・インクルージョンの施策というのは、何の事なのか概念だけを私なりに整理してみました。対象者としては、社会から排除されやすい人。実施主体としては、公とNPO・ボランティア等が一緒になって行う。それから実施の単位としては、市町村よりもやや小さい単位で行っていることが多い。供給のサービスとしては、色々なものを一緒にやっている。手法としては、社会福祉の基本的なツールであるコミュニティーソーシャルワーク等を行う。基本的な理念としては、人権尊重、社会的な存在としての人間を確立していこうという事になっています。私の概念整理は大体このようなものですが、ただ私自身、具体的にどのような仕事をしているのかという事で、強い問題意識を持っていました。これが日本の新しい社会福祉政策、社会政策の方向だろうというふうに思った訳です。

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