【4.地域や産業が必要とする多様な人材をどのように養成するか】
次に、地域産業が必要とする多様な人材をどのように養成するかというテーマについて少しお話します。政府では、地域再生や地方分権、税制については三位一体改革が議論されていますが、構造改革の一環として構造改革特別区域法が施行されました。自分が所在する地域の生活や産業が活性化してくれば、日本全体として豊かな社会になるわけですから、そういう意味において地域から新しい産業を考えるというのは至極当然なことです。特に、従来型の産業という面を見ると、地域からもう一度見直すという点で、注目すべきものであろうと思っています。
この法律の中には、地域産業の活性化を担う人材を育てるというものが入っており、私どもは広い意味で教育という分野を担当してきておりますので、その一環として特区法の認可を得たというわけです。私どもはこれを後継者育成と位置づけています。
その地域、自治体には、それぞれ名門の企業があり、そういう名門の企業は、次の後継者があって発展していきますから、後継者を必要としているわけです。そういう意味の後継者育成講座になると言っているのですが、教育界において、そうしたものを特区でやる必要があるだろうと思います。
日本の場合、人口40〜50万人以上の市には大学や専門学校が必ずあります。特に大学・大学院の科目は、法律といえば憲法・民法・刑法といった具合に、東京や大阪で教えているものと同じ内容となっています。経営についてもそうです。その地域にある大学であるにもかかわらず、アメリカ的な理論やマーケットの理論を教えているなど、必ずしもその地域が必要とする法律や経済、経営を教えているわけではありません。また、教授についても東京や大阪などから、たまたまその地域に赴任していることが多く、その地域の固有のことを教えるべき先生というのはいないわけです。それではその市の地域再生としての教育は行われていないと言わざるを得ません。こういうところも再考すべきだろうと思っております。地元においても、市の商工労働部や、財団・社団の商工会議所や経営者協会などがありますが、こうしたところも産・学という形で協力して、その地域をきちっと見つめていくことが必要です。
後継者についても、一度東京や大阪、あるいは海外の支店で20〜30歳ぐらいまで働き、40歳ぐらいから地元に戻る、そういう後継者も非常に多く、何も高校生がそのままストレートに後継者になるばかりが後継者ではありません。そういう形も含めて、後継者というものを考えていかないと、地元の再生・活性化にはならないだろうと思っております。例えば、日本では通訳案内業というのがありますが、日本全国の通訳案内をしても仕方がありません。やはり京都へ来るときは京都の、奈良へ来るときは奈良の案内ができればいいのです。これからですが、京都が京都の観光検定を作って、試験を始めるといっていますが、これはいいアイデアだろうと思います。
ですから、地域の活性化産業は、何も東京やニューヨークの真似をする必要はないのです。自分の地元の産業の人材養成は、教えるのにふさわしい先生が地元にもおられるので、何も外国で高度なものを勉強した人が教授になる必要はないのです。私どもは、このような特区の認可を受けましたので、後継者については今申し上げたような観点で、地元に役に立つ人材の養成をやらせていただくつもりです。
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