国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議
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1.はじめに
2.これからの高等教育機関はどうあるべきか
3.大学(大学院)教育はどのような役割を果たすべきか
  専門職大学院設立の流れ
4.地域や産業が必要とする多様な人材をどのように養成するか
5.LEC大学の設立に関して
●質疑応答

【5.LEC大学の設立に関して】

 一応、テーマについて大方お話しいたしましたが、LEC大学の設立についても、少しお話を申し上げます。
 2002年12月末に話を始めまして、昨年(2003年)の1月中旬に内閣官房の特区推進室に大学設立の提案を行いました。この段階では、株式会社での設立について認められてはいませんでしたが、とにかく申請しなければ話は進まないということで申請したわけです。
 申請は、政府のホームページ上に入力フォームがございまして、そのフォームに従って文章を打ち込むといった方法でした。ホームページには、政府のいろんなデータが膨大にあり、それを全国のどこからでも閲覧したり、場合によっては申請することができます。これは大変革命的であり、官庁に対する申請といった業務を行う分野においては、インターネットによるデジタルの効果は計り知れません。
 そして昨年(2003年)の3月の上旬ごろに文部科学省において、いわゆる株式会社も大学の設置主体として認めるという方向で回答があったので具体化したというのが実情です。このときに、学校が建つ土地・建物については自己所有が法律上の要件であったものを、特区制度により賃貸でも可能となるよう同時に認めていただきました。現に、私どもの会社で運営しているキャンパスは、駅前にありますので全部賃貸です。しかも、教室というのは、事務所等で多くの場所を取りますから、形を整えると千坪〜2千坪ぐらいになり、駅前に自己所有で確保することが非常に困難になります。ですから、賃貸でもOKと要件が緩和されて、はじめて現実にできるようになったということです。

反町勝夫さん 学校教育法第2条に、大学を設置できる者は国や地方公共団体及び学校法人のみと規定されていますが、特区により例外が認められましたので、2003年10月1日に東京千代田区と大阪市が申請をしたということです。
 特区は、内閣官房に申請し、内閣総理大臣が自治体に対して認定をしましたが、株式会社であるLECが申請している大学が私立大学として認められるかどうかは、文部科学省が別に審査することになりました。つまり、新しい私立大学の認可ですから、教員の数やカリキュラムなど、従来設置審議会で行っているのと同じ基準で審査するというようになりました。
 ただ、そういわれても私どもは既に約30年間、株式会社として公認会計士等の予備校を運営してまいりましたので、既存の大学のやり方と全然違うわけです。消費者のニーズ・マーケットに認められたビジネスモデルですから、その点のズレをいかに調整するかという点が論点になりました。例えば、私どもは全国40か所ほどのキャンパスがあるのですが、そのキャンパスは自治体ごとに1つずつ別なのか、あるいは全部まとめて1つなのかということが問題になりました。しかし教員の数などの問題もあるので、まとめて1つにせざるを得ないだろうということで大学としては1大学というようになりました。

 また、私どもの場合、全国のキャンパスと講師のカリキュラムの話など、全てテレビ会議で行っていますが、教授会などもテレビ会議でいいのかということが話題になりました。それを認めないということになると困難な面もございますので、これもどうにか認めてもらったということであります。
 あと、大学には運動場というものがありますが、全国から優秀な人を東京に集めれば、他にも寮を用意するのが当たり前ですし、食堂や医療施設も必要になります。日本における昔の富国強兵という時代において、欧米人と戦うためには体力がなければとても戦えないということで、体育が必須となり運動場が設けられているわけですが、それが未だに大学にも残っているということです。いまさら大学で体を鍛えるといってみても、単純に運動場があって、400メートルトラック運動場が1つあればいいというものではありません。運動には、テニスやゴルフなどもありますので、単に運動場を走るだけが運動だと思っている大学生はいません。これも今年の第4次の特区提案の中で私どもが提案したことですが、例えばゴルフは民間の立派なゴルフ場がありますから、そこを借りる契約をすればいいと、水泳もそうです。また、体操もそうでしょうし、そういうところがたくさんあるわけです。

 それから、大学を卒業して企業に入社した段階では、新入社員ですから経理課や営業など、さまざまな部署へ回されます。仮に営業であっても、今はどこでも事業部制ですから、売上、経理、予算の基準というものを理解できないといけない。また、今日ではコンプライアンスなどは常識です。さらにクレジットや賃貸借契約などでいろいろなものを借りることができるようになると、そもそも会社員になる前に、一般市民としての最小限度の法律を勉強しなくてはならない。そうした意味で、経済学部であろうと文学部であろうと、例えば簿記は知らなければならないだろうと。学部以前に現代人として企業に勤める人は最小限度簿記も勉強してもらう、法律も勉強してもらう、当然パソコンスキルも身に付けてもらうということです。
 学部に関係なく育てるということは、範囲が非常に広くなるわけですが、大学で教える科目というのは、法学部だから法律だけ教えればいいというわけにいかない。そうすると結局、先ほど言いました就業能力の最小限度、我々はこれを「キャリア」という言葉で言っているのですが、キャリアとしての科目は全員に教えなければ意味がないのではないかということになります。

 また、それ以外に図書館については、社会で必要なものは、自分の実務に生かせる程度の知識を満たすようなデータベースとしての図書館、資料室が今の一般の大学で求められています。社会人大学における図書館の機能というのはそういう意味ではなかろうかと思います。
 研究室についても、教授1人に対して1つの研究室を要件とすることについてもどうかと思います。例えば、総合研究所を持つ企業では、1人の研究員が一つの個室を持って研究しているところはありません。それは、研究というのが一朝一夕でできる世界ではないということもあります。特許にしても、何十人単位で協働して特許を申請するように、我々社会が必要とするのは協働です。どこのメーカー、企業であっても協働と分業で協力し合っている時代に、1人が個室に入って仕事はできないのです。ですから、教育研究費についても個室にこもってやる時代ではないということです。
 いずれにしても、文部科学省の基準が悪いといっているのではなく、株式会社大学というものの実態から見て、消費者のニーズと文部科学省の基準にギャップがあるということを端的に申し上げているだけであり、決して批判しているわけではありませんのでご了解いただければ幸いです。

 ともかく、今年(2004年)の2月16日に、文部科学大臣から学校教育法第1条に定める大学としての認可をいただき、4月1日から大阪市では59人、千代田区では136人の計195人の学生が勉強を始めています。卒業まで4年、編入は2年ですが、卒業段階で入学時よりも必ず付加価値をつけなければならないと、私どもは考えております。人間の頭脳に対して付加価値を付けることは難しいのですが、例えば全員が簿記3級程度の付加価値を付けて送り出さないと、会社に入って申し訳ないと考えています。また、キャリア開発学の中には法律分野、会計分野、それからデジタル分野などがあり、そこで会社が必要となる最小限度の能力は身に付ける。これは「賞味期限3年」と言っているのですが、会社に入って3年間は使えるぐらいのものは、大学で身に付けて会社に就職してもらわなければ、私たちは責任を果たしたことにはならないだろうと思います。そのあたりの最小限度の基準を、まずスタートラインにして、認可いただいた教育目標を達成できるようがんばってきております。

 以上、お話申し上げましたが、何かご質問がございますれば何なりと答えさせていただきます。

 

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