【6.やりがいと今後の課題】
そういう形でやっていまして、本当にやりがいと難しさをかみ締めた1年4カ月なんです。
やりがいということについて言うと、やはり意欲と能力のある社会人学生に向き合う教育ができる。それはやりがいだと感じています。
そのことが同時に難しさで、先ほど申し上げましたように貴重な講義時間にテキストの内容そのままではなくて、それを超える「実務とどう関わるか」ということに踏み込んだような内容をと要望されます。あるいは、学生さんたちはいろんな組織の中でお仕事をしていらっしゃいますので、少しずつ基礎能力に差があるんですけれども、そのあたりをどういうふうに教育として取り組んでいったらいいのかということも難しさだと思っています。
それから、もう一つ同じようにやりがいと難しさを感じるのは教育の在り方です。私達、少なくとも私は長くティーチング・メソッドとしてレクチャー・メソッドというか、講義方式による講義をすることを一般的なやり方とし、且つ、それで満足していたのですけれど、現在求められるのは、当然レクチャー・メソッドだけではダメで、いわゆるケース・メソッドというか、ディスカッション方式を織り込まなければいけません。ところが、そのディスカッション方式を織り込んだ講義のやり方というのはまだまだ日本では十分にやれていないというか、少なくとも私はまだ未熟なところがあって、なかなかエネルギーを必要とします。「一方的なレクチャーのほうが実は易しかったのかも知れないな」と思うことがあるくらいでして、もちろん専門職大学院ではレクチャー・メソッドが有効な内容もあるんですけれども、こういうケース・メソッドあるいはディスカッション・メソッドを入れた教育方法にも今後取り組まなければいけないと思っているところです。
さらに付け加えると、特に難しさとして、課題として熱心に学んでくださる学生さんたちを見ながら思うのですが、さっき申し上げたように、アメリカの場合はプロフェッショナルスクールを出るとそれに対する適正な処遇というのが社会環境としてあるいは制度としてでき上がっているのに対し、日本ではそういう制度がまだ整っていない。ですから、MBAを取ったとしても、それに対してきちんとした処遇の企業や自治体がまだ無いというのが現実です。その意味では、こんなに熱心に勉強してくださる学生さんたちが企業あるいは自治体に帰ったときに、それに的確な処遇や制度が無いというのは、恐らく共通の課題なのではないかと思っています。
以上、課題も織り交ぜまして、私達の大学院につきまして概ねこんな状況だということをお話をさせていただきました。
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