国際人権大学院大学(夜間)の実現をめざす大阪府民会議
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1.プロローグ
2.「人権プログラム」とは
3.調査・研究の目的及び方法
4.「人権プログラム」開設状況
5.アジア・太平洋地域の「人権プログラム」
6.その特徴と意義
7.インターナショナル・プログラムの課題

【4 「人権プログラム」開設状況】

阿久澤麻里子さん  2ページ目の下の表をご覧ください。私たちが調査対象とした97の人権プログラムが開設されている地域、修了までにかかる期間、学位の種類などをまとめました。

 学位については、ロースクールの学位は、やや特別なので、1つありましたが、はずしています。LL.M.(法学修士号)、M.A(修士号)のほか、短期間でディプロマとかCertificateを出しているものもあります。M.AとLL.M.の比重を見ますと、M.A、いわゆる学際的な趣旨で人権研究や教育をするほうが多くなります。地域別で「人権プログラム」が断然多いのはヨーロッパです。しかも、65のうち50がイギリスに集中しています。期間は、修士号はほとんど1年となっています。

 なお、そのほか、いくつか興味深かったことを付け加えておきます。ヨーロッパの中には結構おもしろいプログラムがありました。EUを中心にヨーロッパの統合が進められていますが、ヨーロッパの大学ではエラスムス計画というもので連携をし、教員や学生が自由に移動できるようにしようというスキームを持っています。このエラスムス計画を使って、学生が自由にヨーロッパの中を移動して、ヨーロッパの複数の大学で勉強しながら人権の学位を取ることができるので、複数の大学連携による「人権プログラム」があります。EUの下で、“人権と民主化のためのヨーロッパ大学間センター”がマネージメントをしており、「人権と民主化ヨーロッパ修士」という変わった名前の修士号を出しています。複数の大学が関わるものですが、1つの学位を出す1つのプログラムなので、この表では1としかカウントしていません。

 一方、嫌な言い方をしますと「発展途上国の民主化をわたしたちが助けてあげよう」というタイプのプログラムも、ヨーロッパにはいくつかあります。要するに途上国が民主化することは世界の要求でもあるわけで、途上国の学生を対象に、人権を教えるのです。こうしたものの中には、スペイン語、フランス語など、要するに旧植民地の言語に合わせて行われているものもありました。また、東ヨーロッパの統合も大きな問題ですから、東ヨーロッパを特にターゲットにしている大学間連携による修士プログラムもありました。

 これに対して、アジア・太平洋地域にある人権プログラムは、民主化運動の中から生まれており、その社会の運動やニーズに合致してつくられてきたように思います。内発的な人権を実現したいという思いが強いのがアジア・太平洋地域のプログラムの特徴です。日本の大学の同和教育も、要求運動を背景に始まりましたから、非常に共通する点があると感じます。社会・運動と人権プログラムがきちんとつながっています。

 それから、出している学位の例という項目をご参照ください。珍しい修士号の名前が結構あると思います。学際的な修士号の中には「人権・紛争管理修士」「子どもの権利修士」などというのもあります。

 次に、(3)「エリート志向」と「草の根志向」という項目をご覧ください。先ほどの運動の話ともつながりますが、人権プログラムは「エリート志向」のものと「草の根志向」のプログラムにかなりの程度はっきり分かれるように思います。特にアメリカのプログラムを見ているときに驚いたのですが、国際機関の職員養成、国際ビジネスマンの養成を主体とするところも少なくありません。たとえば、CSRを中心にやっているプログラムで、卒業生の就職先が、国際的な金融機関に集中しているなど…。もちろん、社会的には意味があるかもしれませんが、これは草の根からみて、意味があるのかどうか。こういうプログラムがアメリカでいくつか目立ちました。

 もちろん途上国の中にも皆無ではありませんし、先日メンバーの1人が調査をしたネパールでは、在学生のほとんどが、「国際機関に行きたい」とか「ネパールを出たい」とか言っている、というので、ややショックを受けました。こうなってしまうと、人権プログラムはエリートを作って頭脳流出を促すプログラムになってしまいます。人権プログラムだからOKということにはなりません。 あるいは、そこまでいかなくても、やはり途上国の政府自身が人権の実務家を求めていますから、プログラムの修了者は政府の役人になります。そのほか、法律家や、多様な専門職の人をつくるわけで、特に英語でやっていますから、国際的なエリートをつくろうと思ったらつくれるわけで、グローバル時代の「勝ち組」づくりのプログラムになってしまうと、私たちが本来求めている大学院の人権教育や研究からはかけ離れてしまうのではないか、と考えさせられました。

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