【6.これからどうする】 極端な例でいうと、浜松市も小樽市もかつて外国人を強く差別したことで有名な町であります。浜松は市バスに乗ると、「今、外国人が乗りましたので懐中物にご注意ください」というふうに運転手が放送したという町でした。宝石店で外国人が来ると、外国人はみんな空き巣の下見だというので、店に入れないのです。それが問題になって裁判で負けた町です。 浜松市は反省し、外国人住民との多文化共生を本気で考えるようになりました。外国人多住都市会議というものを立ち上げ、日系ブラジル人等が多い浜松や豊橋、豊田、あるいは群馬県の太田など、15、6の日系ブラジル人が多く在住する都市を束ねて、市長が集まり会議を開き、そこで多文化共生に必要な様々な制度的提案を国に対して行う多文化共生都市であります。 一方、小樽市も外国人差別の激しいところで、公衆浴場への入浴拒否ということで裁判で負けました。 そこで、もし自分が外国人で日本に来たときに浜松に住みますか、小樽に住みますかと聞かれたら、やはり小樽市は嫌だな、浜松市に住みたいとなるだろうという話です。 その昔、町田市で大下市長が、障害者のための町田市になると宣言し、障害者に対する施策を充実させました。また同時に、市の職員に障害者を大量に採用しました。その結果、それを慕って障害者がどんどん町田市に来るわけです。当時は自治体もお金がありましたから、いいじゃない、どんどん来てくれと、そういう太っ腹なところがありました。そして、神奈川県の長洲知事に真似してもらいました。神奈川の大和に難民定住センターがあります。姫路にも難民定住センターあります。その結果、その周りに外国人が住むようになってきました。県議会で、こういうことで外国人が増えて問題があるのではないかと言われたときに、長洲知事は「ご承知のとおり、日本では難民は6千でございます。姫路と大和では日本語を教え、いろんな職場も斡旋して、皆さんのがんばりで日本に定住しています。6千人、何なら全員来てくださってもけっこうです。神奈川県民は780万人です。その中の6千人、何の問題があるのですか」と強気の答弁をしたことがありました。 そういうふうに浜松市にしても、多文化共生、結構じゃないかと。浜松の将来のためにはこれしかないというふうに割り切ってがんばれる、そういうところが必要なのだろうと思います。そうでなければ、実際には外国人も来てくれません。外国人が来てくれなければ、これから先、日本の地域はお先真っ暗であります。 さて、次に「三層のグローバライゼーションへの対処」についてお話します。つまり、一つ目に人権のまちづくりでもっとポジティブな面も考えていこうというのがあり、二つ目にグローバライゼーションに対処するということを地域は本気で考えなければいけないということがあります。 私たちはグローバライゼーションは三つと考えております。一つは、世界市場主義経済が地域に浸透し、何でも商品化されていく時代。二つ目が、金融であります。金融騰貴主義が甚だしい。大博打が毎日繰り返されて巨額のマネーが流れている。三つ目が、いわゆるマクドナルド化であります。つまり地域固有の文化とか、そういうものをなしにして、画一的なそういう人々の暮らしが大いに煽り立てられている。この三つが問題かなと思っております。 そこで、その問題を人権として考えていく際に、私はもう1度、日本国憲法の25条に注目してもいいかなと思っています。なぜなら、そこでは健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が言われているからです。この憲法25条1項の規定というのは、アメリカ占領軍が出してきた日本国憲法の草案にはなく、日本側で特に社会党の当時の議員が頑張って入れさせた、いわば和風の条文なのです。健康で文化的な最低限度の生活。あまり意味を考えることもなく言葉を連ねていますので、今になってこれを解釈するとこうなるぞというのは、日本国憲法は右から左まで何でも解釈できるという訳の分からないものになってしまいますから私は嘘だと思います。 しかし健康、文化的、最低限度というキーワードは使えるかなと思います。今まではどちらかというと、戦後は最低限度の生活しか確保されていませんでしたが、公害問題、環境問題などが起きて、健康な生活というものがいかに大事かということが見えてきました。また、アイヌの問題など様々な問題が出てくると、固有の文化を持って生きるということがいかに大事かということも分かってきました。そういういう意味で、健康で文化的な最低限度の生活が一つになるといえばなるのですが、健康的、文化的、最低限度と三つ並べて言ってしまうのではなくて、健康な生活が確保できる、そして文化的な生活が確保される、そして最低限度の生活が確保できるというふうに、三つの要素をきちんと分けて、それらのことが確保されようとしているんだというところを考えていきたいというふうに思っています。
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